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時間
岸本はがっくりと肩を落とし涙を流した。
「お、俺は…どうしたら…
親孝行の一つもしてないのに…
…そうだ!」
岸本はスマホを手にし、電話を掛けようとした。
「…え?なんで繋がらない!?」
「申し訳ありませんが、今は時間を止めてますので、それは使えませんよ」
レイノルズが頭を下げる。
レイノルズは説明を続ける。
「この知らせは貴方にだけ告げる特別なもの…
私達の存在を人間に知られる訳にはいかないので、時間を止めて話しています
私達が去れば時間はまた動き出し、私達の記憶は貴方の中から消えてしまいます」
「ちょっと待て!それじゃあ、おふくろが亡くなるのも忘れるって事かよっ!?」
岸本は声を荒げる。
「それでも、大事な人が亡くなるという事は貴方の魂に刻まれてますので、記憶は消えても違和感として残ります
大事な人に何かあったんじゃないか?と気付く…それが『虫の知らせ』と言う事です」
レイノルズの説明が終わるとゲオルグが岸本に告げる。
「…貴様が死ぬ訳じゃない
生きている者には死に行く者へする事があるんじゃないのか?」
岸本は、はっと顔を上げた。
「けど、時間が戻って何も気付かなかったら…
それにたった1日で何が出きるって言うんだ…」
「大事な者の顔を見るだけで魂は穏やかになる
後は貴様がどれだけ相手を想っているかによる…
この『虫の知らせ』は誰にでも届くものではない
離れた相手をどれだけ想い合っているかで決まるのだ
今、貴様が流した涙が本物であるならば問題はないだろう…」
ゲオルグはそう言い残し消えた。
「私達がお知らせ出来るのはここまでです
…私が消えると時間が動き出し、貴方の記憶も元の時間に戻ります
後は貴方の想い次第ですが、多分大丈夫でしょう
それではこれで失礼します」
レイノルズは深く頭を下げ、消えていった。
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