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死神とは…
ゲオルグは執務室に戻るとすぐに報告書をまとめた。
「岸本隆史か…
まあ、あれだけ刻まれていれば大丈夫だろ…」
「では、報告書を協会長様に届けてまいります」
レイノルズは報告書を受け取ると執務室を後にした。
ゲオルグは窓に向かい大きく伸びをした。
「ふぅ…全く人間って奴はよく分からんな
どんなに足掻こうが死からは逃れられない…
それを分かっていながら死に向き合わない…」
「だから、人間は面白い…でしょ」
レイノルズが後ろにいた。
「なんだ?もう届けて来たのか?」
「隣ですから…」
レイノルズはニヤリと笑う。
「なあ、レイ…
いつも思うんだが、死神とは何なんだ?
…死神の私が言う事じゃないがな…」
「人間の死を見守り、肉体を離れた魂を天界に運ぶ役割ですかね」
レイノルズは事務的に答える。
「…生きとし生ける物は必ず死を迎える
死神などいなくても、魂は勝手に天界に行くだろう?」
「真っ直ぐ天界に行くならば問題ありませんが、天界に行かずに現世をさ迷う魂はいろいろ問題ですからねぇ
運び手は必要だと思いますよ…」
レイノルズはあくまでも冷静だ。
「…だから死を司る死神がいる…か…」
「そういう事です…
さ、ゲオルグ様、次の告知の方の資料です」
ゲオルグに資料を渡した。
ゲオルグは資料に目を通し、溜め息を吐く。
「はぁ…なん」
「なんでこんな面倒くさい規則が未だにあるんだ?…ですか?」
レイノルズは、ゲオルグが言わんとする事を先に言ってしまう。
「うっ…愚痴くらい言わせろ」
「もう聞き飽きましたので失礼します」
頭を下げ執務室を出ていくレイノルズにゲオルグは苦い顔をするしか出来なかった。
end
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