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研究所の上層部と野原の判断で、拉致事件のことは伏せられた。柴田家の不思議な力が世間に知られれば、また同じような事件が起こりかねないからだ。
所内の研究者や職員へは、研究中に爆発事故があり、その際、わずかに有毒ガスも発生したと通達された。
三名の男たちは、指導研究員にも、研究所にも未申告の実験を行って爆発を起こし、事態が露見するのを恐れて仲間内で口論となり、有毒ガスのなかで殴り合いの喧嘩をしていた。ということにしておいた。
苦しい説明ではあったが、狐男は、もともと疎まれていたために、『いつか、何かやらかすと思っていた。』と皆が受け入れてしまった。
当の三人は、研究所内の処置室に運ばれた時に、『血を飲まされた!赤い瞳で睨まれた!緑の瞳の大男に襲われた!』と、うわごとのように訴えていた。けれど、有毒ガスのために幻覚を見たのだろうと、誰も本気にしなかった。
本当は、六郎の血液を飲ませるときに、男たちが嫌がり暴れ、堪忍袋の緒が切れた清が、
「死ぬほうがいいか?」
とすごんだせいで、彼らは怯え、うわ言を言っていたのだが、そのことは野原も篠崎も黙っていた。
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