28人が本棚に入れています
本棚に追加
その日のうちに、細川は六郎の家に移された。移動の間も清が背負い、回復の手助けを続けた。
細川の妻と娘、そして孫が小山内の案内で柴田家に到着した時、細川は離れのベッドに横たわり、清に手を握られて柴田家の面々に囲まれていた。
二人の容態を、野原と篠崎が注意深く見守っている。
「綺麗な方。」
可愛らしい声が聞こえ、細川が嬉しそうに目を細める。
「龍、来たのかい?」
「うん。おじいちゃま、その方はどなた?」
「清くんだよ。」
「清様。髪も目も綺麗ね。」
清が少女に微笑むと、少女の頬が薔薇のように赤く染まる。
六郎が少女に近寄り、とろけそうな笑顔で両手を差し出す。
「龍、会いたかったよ。可愛いなぁ。」
「どなた?」
「おじいちゃんの友だち。」
六郎が答えると、少女の母が言う。
「お母さんの命の恩人よ。柴田様、ご無沙汰をしてしまったご無礼をお許しください。その節はありがとうございました。」
六郎が笑い
「会うなと言われてたんだから仕方ない。こっちこそ、結婚も出産も祝えず、ご亭主の葬儀にも行けず、ごめんな。」
「とんでもございません。」
柴田家の面々が、不思議そうに二人のやり取りを眺める。六郎が野原に
「野原先生、もう、ていと毒蛇の話、家族に話してもいいかな?」
と尋ねると、野原が頷く。
「ご家族には、良しとしよう。」
それを受け、六郎が話し出す。使用人たちが慌てて部屋を出ようとすると
「おいおい、どこへ行く?家族は良いって言われたろ?」
と六郎が言い、使用人たちは苦笑するしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!