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けれど、フジも
「一緒に聞きましょう。」
というものだから、使用人たちは部屋に留まり、静かに六郎の話を聞いた。
六郎が話し終えると、マスが
「それで、あの人たちは、私の血が薬になると言っていたのね。」
と呟く。
「恐ろしい目に合いましたね。よくぞご無事で。」
細川の妻がマスに言い、マスの目に涙が溢れる。
「細川さんのお陰です。けれど、そのせいで、細川さんが大怪我を…。申し訳ありません。本当に申し訳ありません。」
泣きながら土下座をするマスを、細川の妻と娘が、慌てて起こそうとする。すると、細川がのんびりと言った。
「おあいこだよ。」
「え?」
「六郎はていの命を救ってくれた。俺はマスさんの命を救った。これでおあいこ。」
「でも…」
「それにね、マスさん。マスさんが謝ることなんて一つもない。俺が死ぬのは、あいつらに殴られたせいだ。」
「死なないだろっ!?」
六郎が大声を上げ、細川が笑う。
「死ぬだろ。篠崎先生の顔を見ろ。」
六郎が篠崎を見やると、いつもの気難しそうな顔のまま、口をへの字に曲げて、グズグズと泣いていた。
野原がそれを見て、呆れ顔をする。
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