集合

4/6
前へ
/272ページ
次へ
 けれど、フジも 「一緒に聞きましょう。」 というものだから、使用人たちは部屋に留まり、静かに六郎の話を聞いた。  六郎が話し終えると、マスが 「それで、あの人たちは、私の血が薬になると言っていたのね。」 と呟く。 「恐ろしい目に合いましたね。よくぞご無事で。」 細川の妻がマスに言い、マスの目に涙が溢れる。 「細川さんのお陰です。けれど、そのせいで、細川さんが大怪我を…。申し訳ありません。本当に申し訳ありません。」  泣きながら土下座をするマスを、細川の妻と娘が、慌てて起こそうとする。すると、細川がのんびりと言った。 「おあいこだよ。」 「え?」 「六郎はていの命を救ってくれた。俺はマスさんの命を救った。これでおあいこ。」 「でも…」 「それにね、マスさん。マスさんが謝ることなんて一つもない。俺が死ぬのは、あいつらに殴られたせいだ。」 「死なないだろっ!?」 六郎が大声を上げ、細川が笑う。 「死ぬだろ。篠崎先生の顔を見ろ。」  六郎が篠崎を見やると、いつもの気難しそうな顔のまま、口をへの字に曲げて、グズグズと泣いていた。  野原がそれを見て、呆れ顔をする。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加