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「なんだ、喧嘩を始めるのかと思ったら、いちゃついているのか。」
六郎が言い、細川が「あはは」と笑う。
「そうだ。せっかく家族が揃ったんだ。銀杏並木を見せてくれよ。」
細川が言い、六郎が残念そうに眉を下げる。
「もう暗いし、この離れからだと見えないんだ。明日、みんなで見よう。そうだ、みんなでここに泊まればいい。」
「いいのか?じゃあ、そうさせてもらおう。なぁ?」
「でも、あなた。」
「ずーっと六郎と話してたんだ。いつか、お互いの家族みんなで、色づいた銀杏並木を眺めたいなぁって。」
「でも、」
「明日まで、清くんに世話になる。明日までだ。そして、みんなで銀杏並木を見よう。それで、終わりだ。」
細川の妻が黙る。
「いいかなぁ、清くん、六郎。明日まで世話になっても。」
聞かれた二人は、『それで、終わりだ』という言葉まで認めるような気がして、頷くこともできず、ただ、細川を見つめ返すだけだった。
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