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その夜、幼い龍が目を覚ますと、祖父の手を握り続けている清の姿が見えた。
暗い部屋の中でも、髪は輝くようで、思わずうっとりと見とれてしまう。
あの髪に触りたい。
そう思って布団からはい出す。そっと清に近づいていくと、祖父の落ち着いた寝息に混じって、泣いているような息遣いが聞こえてきた。
「泣いてるの?」
小声で言うと、清が驚いて龍を見下ろす。
「起こしてしまった?ごめんね。」
「ううん。勝手に起きました。」
そう言いながら、清の隣に立つ。祖父は、とても気持ちよさそうに眠っていて、大人たちが言っていた永遠の別れが、このすぐ先に待っているとは思えなかった。
「どうして泣いてるの?」
「ん?うん。どうしてだろうね。」
「寂しいの?」
「うん・・・どうだろう。分からない。」
「悲しいの?」
「うん・・そうかもしれないね。」
龍はじっと清を見つめる。
「清様は、お美しいのに。」
「私は役立たずなんだ。世話ばかりかけて、自分は誰も救えない。」
清の目から、また涙がこぼれ、それを隠そうと顔を背ける。龍が清の腕をくいっとひっぱり、清の上体を自分のほうへ傾けさせる。
「おっと、なんだい?」
清がほほ笑みながら言うと、小さな手が、清の頭を優しく撫でた。
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