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翌日、黄色く染まった銀杏並木を、皆で眺めた。
芝生の上に清が座り、細川を後ろから抱きかかえるようにして支えている。その周りに皆が座り、料理人と弟子の小山内が弁当を並べた。庭師と畔田は、「鯉に餌をやってみますか?」と龍に声をかけている。
よく晴れた日で、嬉しそうに微笑む細川は、本当に心地良さそうだった。細川の妻は、そんな彼をじっと見つめている。
「銀杏、きれいだなぁ。念願かなって、みんなで見られて嬉しいなぁ。」
細川の言葉に、皆が黙って頷いた。
遠くから、龍の可愛らしい笑い声が聞こえる。畔田におぶわれ、キャッキャッとはしゃぎながら「もっと早く走ってくださいな!もっと早く!」とねだっている。
「六郎、こいつらのこと、頼むな。」
細川が妻と娘を指差しながら言い、六郎が頷く。
「もう、俺の家族だ。」
細川が六郎の顔を見て笑う。
「お前はすごいな。いるだけで安心する。」
細川が言うと、六郎が細川の肩を掴む。
「お前だってそうだ。死ぬのやめてくれよ。いなくなられると不安なんだ。」
「無茶言うな。」
細川が苦笑し、妻と娘に
「六郎のこと頼むな。」
と言う。二人は、泣き笑いの顔で、しっかりと頷く。
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