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細川亡き後、女三人で身を寄せ合って暮らしている彼女らを、柴田家は陰ながら支援してきた。
噂の届かない遠方に家を用意し、月々の仕送りも欠かさなかった。細川の妻は、最初、身に余る援助だと辞退を申し出たが、六郎とフジが引かなかった。
「細川が『自分の幸福を守れ。それが、救える者の使命だ』と言っていたじゃないか。細川家は柴田家を救った。そのせいであなたがたが不幸になったら、いかんのだ。」
「それに、夫は細川さんから皆様のことを託されました。私たちは、あなたがたの幸せを守る義務があります。私たちを約束破りにしないでください。」
細川の妻は、『そうだ!そうだ!』という夫の声が聞こえた気がした。苦笑し、涙して、
「責任を持って、幸せになります。」
と、深々と頭を下げた。
清は、両親が日本を離れた後も、自分なりに彼女たちを守ろうと決めていた。細川と一緒に頭を撫で、励ましてくれた二人。そして、その前の晩、やはり頭を撫でながら、清の目が大好きだと言ってくれた少女。
生まれた時から、家族以外の者には、気味悪がられ、恐れられてきた。けれど、細川家の人々は、自分を受け入れ、触れて、励ましてくれた。
清は、家族と彼らがいれば十分だと思った。会えなくとも、皆がどこかで幸せに暮らしていてくれれば、それでいい。
自分は、この家の中で平穏に暮らしていける。外に出ないことにも慣れっこで、苦ではない。それならば、生涯、この家の中で、世間の好奇の受け手を引き受けようではないか。
それが、役立たずの自分ができる、唯一のことのようにも感じていた。
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