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「クイーン・セレーネ号で、危険な目にあっただろう」
ツボミはカッと頬を上気させる。
大型客船に乗り込んだ事件は、大人たちには内緒のはずだ。
だが実際は、ドレス姿の写真も流出しているし、起こった事件の内容もバレている。
玉村は、
「おとしまえをつけなきゃね」
「おとしまえって……」
「あの事件の責任をとって、シンさんはツボミの前から消えようとしたよ」
玉村の言葉で、優子は使われていない地下鉄に、玉村とふたりでシンを迎えに行ったことを思い出した。
まるで墓標のように寒々とした、地下鉄の路線だった。
電気も通っていない暗闇の中で、シンは自らを傷つけて血だらけになって倒れていた。
そして優子に、
「俺を焼け」
と、まるでそうすることが当然のように命じたのだ。
もちろん、そんなこと優子に出来るわけもなくて、
「オレはシンさんを死なせてやらなかった。でもその代わり、死ぬよりもつらい目に合わせると約束したんだ。じゃなきゃあポチに顔向け出来ないし、それにポチを取り戻せない」
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