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とたん、ツボミはムッとした顔をする。
父親の信芳の話題が出ると、ツボミはたちまち不機嫌になる。
「なんでここでパパが出てくるんだよ」
イライラと、
「ランドセルを買いに行ったのも制服のサイズ合わせも、一緒に行ってくれたのは玉村のオジサンだぞ。今更パパが、どんな顔して文句を言えるんだよ」
「でもねぇ」
優子。
「女子高生が喜ぶプレゼントにお食事デート。小学生の買い物とは話が違うでしょう」
「デ、デート?」
いきなり違う言語で話されたように、意味不明と目を見開くツボミに、
「財布も時計も、ただのお買い物とは、とても思えないわ。玉村さん、離婚して独身に戻ったんでしょう。高校生になったツボミに、いよいよ本気になったんじゃない?」
「――は!?」
ツボミは最近になって知ったのだが、結婚すると言って鴻上家を出て行った玉村は、いつの間にか離婚していたらしい。
理由も原因もツボミは知らない。
思い起こせば、玉村の奥さんという人の顔も見たことがなかった。
優子はついにはっきりと口にした。
「離婚理由もツボミが原因じゃないとは言い切れないわよ」
「……へ?」
「あんた、玉村さんに甘えっぱなしじゃない」
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