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瞬間、ツボミの全身から力が抜ける。
「うわぁぁぁぁああ」
顔を天に向けて、大きな声で泣きだした。
「うわぁぁぁぁん」
欲も得もない、その子どものように全身で悲しむ様子は、見ているこっちの胸が痛くなる。
さすがの玉村も、
「……ツボミ」
戸惑う声音で呼びかけた。
すると、
「あんたのせいじゃないの」
沙羅が食ってかかっていった。
「ツボミが泣いてるのは、全部あんたのせいよ」
そんな沙羅を、またシンが止める。
シンは玉村の前に進み出て、泣きわめくツボミの肩を引いて下がらせる。
少しだけ唇の端をあげて微笑みを浮かべた。
「……パパ」
前に進み出て、ツボミから玉村の姿が見えないようにする。
そこで音もなく、自分の特殊警棒を取り出す。
クルリと反転させて、持ち手を玉村の方に向けた。
言葉ひとつかわさないが、玉村はそれを受け取る。
シンは特殊警棒の尖った先を自分の胸に押し当てた。
玉村がそのまま押し込めばシンは一瞬後には死ぬだろう。
そして、
「これで終わる」
低いシンの声。
終わる。
すべてが終わる。
玉村が望んだように、シンも死んで、すべてが終わる。
玉村の長い長い復讐も終わる。
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