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呼びかけられて、玉村はギクリと顔を強ばらせる。
ツボミはゆっくりと玉村に近づいていった。
「なんで、今さらウソなんかつくんだ?」
「ウソ?」
ツボミは、
「うん、パパがそのポチって人を殺したって」
「……」
黙り込む玉村に、全員が、
『ウソだったのか!』
玉村を凝視する。
だがしかし、さっきシンもポチを殺したことを認めたはずだ。
はっきりと自分の口でそう言った。
だのに何故、ツボミは玉村の言葉をウソだなんて言えるのか。
ツボミは、
「あたし、いろいろ思い出したんだ。真っ暗で寒い場所にいたことも。あれはポチって人との最後の記憶だ。だからオジサンが言っていることが、あたしにはウソだとわかる」
「待って、待ってツボミ」
今度は玉村が叫ぶ番だ。
「思い出しちゃいけない。それは思い出しちゃいけないんだ」
玉村の言う通りだ。
ツボミが言っているのはおそらく、ツボミの本当の父親ポチと育ての父親のシンが殺し合った時のこと。
そんな記憶、ツボミが残していていいはずがない。
聞かされる真実と実際に見てしまった記憶では、あまりにも受けるショックが違いすぎる。
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