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しかしツボミは、靴下の臭いをかいだネコみたいに鼻に皺を寄せて、そして、
「ポチは、パパや玉村のオジサンを騙したんだね」
玉村は、聞きたくないとばかりに自分の耳を塞いで頭を振った。
でもそこに、ツボミは淡々と続ける。
「だから、俺が死ぬのは誰のせいでもないんだよって」
「……え」
ツボミの妙な言い方に、玉村はゆるゆると顔をあげる。
信じられないものを見るように、ツボミを見あげた。
その言葉は、まさか――。
ツボミは、
「ポチが言ってたんだよ。呪文みたいにずーっと。みんなごめん、俺が死ぬのは誰のせいでもないって。
周りは真っ暗で寒くて、みんな石を投げてくるみたいにイライラしてて、すごくイヤな場所だったんだ。
でもそんな中で、あの人だけはあたしの耳元で子守歌みたいにずっと囁いてくれてた。優しい声だった。『みんなごめん、俺が死ぬのは誰のせいでもない。ツボミ、みんなを信じて』って。だからあたし、ちっとも怖くなかったんだ」
「……」
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