1.かたい約束

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1.かたい約束

「頼む! ヌかせてくれ!」 「イヤ! 絶対にイヤだから!」  畳にお尻を擦って後ずさりした加奈子は、追い詰められた。背中がベッドの縁に当たると、ギュッと腕組みし、左右の足も雑巾でも絞るかのようにキュっと絡める。息は荒い。 「オマエしかいないんだよ、こんなコト頼めるの!」 「世界の人口の半分はオンナよ。探したらヌかせてくれる女の子いるかもよ。 私は絶対にイヤだから! イヤイヤイヤイヤァ!」  加奈子は、ふんっ、とそっぽを向いた。もう二度とオレの方は見るまいと固く決意したかのようだ。  怒りと羞恥で膨らませた頬がピンク色に染まっている。それがモコモコの部屋着によく似合ってかわいい。  そう、加奈子は怒っていても可愛いのだ。  ショートパンツから伸びる脚を見て欲しい。この悩ましいピンク色! 女の子というものは怒ると脚まで血行が良くなるものらしい。こまったものだ。拒絶すればするほど、怒れば怒るほど、彼女は僕を誘惑していることになるのだ。 「頼むよ……」  裏返った声で未練がましくすべすべの膝に手を置くと、ピクッと彼女は身を震わせ、脚をキュッと閉めなおす。 ――何とかしなければ……。  広い掃き出し窓からあふれんばかりに注がれる朝の光に加奈子の部屋はピカピカと輝いて見える。床にも机の上にもファンシーケースの上にも一点の埃も見られない。それは加奈子の几帳面な性格を見事なまでに表わしている。  几帳面な女の子は理詰めで考える傾向があると誰かが言っていた。だとしたら、いくら窮地に陥った自分の立場を説明しても彼女の理解を得ることは難しい。なんてったって僕の説明には「理」が通ってないのだから。  ――なら強引に力で押しまくるしかないだろう。 「キャッ!」  僕は彼女の閉じられた脚を強引に割り、膝を進めた。 「ちょっと、な、何を!」  彼女のお尻がフローリングの床を滑り、後頭部がベッドの木枠に当り、ガツーンと大きな音を立てた。モコモコのカーディガンの裾がまくれ上がり臍が見える。形よく縦に細長い加奈子の臍。脚の付け根からのぞくあの白は。──そう、加奈子のまっ白のショーツだ。
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