7.邂逅

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白いハンカチとその上に飲み薬が何錠が入るくらいの小さなジップロックが置いてある。ジップロックを摘まみ上げて日に透かして見ると、長さ3センチくらいの縮れた陰毛が三本入っていた。その下に敷いてあるのは、寝起きのしょぼしょぼした目にはハンカチに見えた。だが、目を近づけてよくよく見ると──、なんと女のパンツだった。春澤さんが加奈子から奪ったと言うやつか…。  春澤さんはどういう意味でこんなものを僕に持たせてくれたのだろうか。カノジョというのは加奈子で間違いないだろう。するとこれは加奈子のはいていたものだったのだろうか。  二日酔いでぼんやりとした頭で何かを必死になって考えようとした。だが、無駄だった。昨夜春澤さんから聞き、かろうじて記憶に残っている断片を論理的に結び付けようと躍起になるほど、胸の奥の方から自分にはどうすることもできない悲しみが湧いてきた。  僕はパンツと陰毛を胸に抱いて、再びベッドにうつ伏した。途端に胸の奥の方から熱い熱い涙が噴き出してきた。  ルームメイトが二段ベッドの上から顔を出し「おい、大丈夫か」と心配そうに見下ろしている。 「好きだったのになあ…。本当に好きだったのになあ…。加奈子ぉ。加奈子ぉ…。」  僕はさめざめと泣いた。
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