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――いやいや。こんな僕だって加奈子に喜んでもらったことはあるぞ。1回だけだけど。
あの、大きなクマちゃんは僕がプレゼントしたものだ。高かった。あの時の彼女の無邪気な喜びようと言ったら……。クマちゃんをキュッと胸に抱きしめた七か月前の加奈子の幼い笑顔を、僕はたぶん一生忘れないだろう。
ちなみに、ちっちゃいクマちゃんは、僕と加奈子がつきあい始める前からこの部屋に生息していた。誰にもらったの、と訊いても加奈子は意味深な笑みを浮かべるだけで答えてはくれない。昔のカレシなのだろう。
大きいクマちゃんの方が圧倒的にかわいいと思う。体と頭の大きさのバランスといい、心優しそうな目の形といい、非の打ち所がない。ちっちゃいほうはリビングにでも置いとけと言ったが、離れ離れにしたら可哀想だからと、ベッドに二匹一緒に並べている。兄弟なのだそうだ。いつも一緒にいないといけないのだそうだ。
彼女のそういう優しさが好きだ。
ぼくは昨晩の彼女とのやり取りを思い出した。彼女のご両親が不在で、僕らは部屋でふたりきりだった。窓の外はもうほとんど日が暮れていて、僕らは制服姿だった。
「ダメよ……、あ、ああっ……。ほら、クマちゃんたちが見ているから…」
加奈子はクマの兄弟を指差し、男の本能で鼻息を荒くしている僕をなだめるのだった。
それでも昂ぶりを抑えられない僕は、ベッドに押し倒した彼女からセーラー服をはぎ取った。ブラのホックを外した時点で抵抗をしないのを確かめてから、クマちゃんたちに手を伸ばしたのだった。
「しょうがないか……。じゃ、いいよ」
クマちゃんたちは、丸く曲がった背中全体を耳にして、僕たちの営みを盗み聞きしていた。
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