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僕の罵りが届いたのか、大きなクマちゃんがガクリと頭を落とした。ちょうど仰向けに横たわった加奈子の胸の上だ。スピーカーがゴソゴソと耳障りな雑音を発する。テレビ画面は下半分に滲みぼやけた肌の色を映し、上半分にはきれいにトリミングされたアンダーヘア。その向こうでおいしそうに汁を吸う春澤の悦に入った表情が映し出されている。
それを涎を垂らしながら鑑賞している自分もやはり春澤と同類だ。
――変態野郎!
僕も変態。春澤も変態。だが、同じ変態でありながらも、僕と春澤には大きな隔たりがある。
僕はちっちゃいクマちゃんに隠しカメラが仕込まれていることを見抜いた。春澤は大きいクマちゃんにカメラが仕込まれていることをまだ知らない。おそらくこれからも気づくことはないだろう。これからずっとあのふたりは僕に覗かれることになるんだ。
これが賢い変態と愚かな変態の違いさ!
やっと一勝を挙げたかな……。
(了)
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