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昨晩のそんな甘美な場面がウソだったように、僕と加奈子は今、険悪なムードになっている。
「加奈子じゃないと頼める女子がいないんだ」
「どうして私になら頼めると思ったの? 私のことバカにしてない?」
「加奈子のなら、見せてもらったことあるから、頼めると思った」
「わたしたちがセックスしたことと、アレをヌくことは全く別次元の話だと思いますがぁ!」
いつにもまして強気な加奈子がムッと顔を突き出してくる。黒目勝ちの視線が今日は鋭く突き刺さる。
「頼むよ。チームのためなんだ。月曜日の試合にはどうしても勝ちたい。でもオレたち城北高校の実力じゃ勝てない。そこで験担ぎに出たわけなんだ」
僕は肩をすくめ両手のひらを上に向け誠実さを前面に押し出す。
「それに、加奈子、オレたちサッカー部のマネージャーだし、そのぐらい協力してくれても……」
「そんなので験が担げるわけ? 前例があるわけ?」
「あるんだ!」
僕は断言した。
「ほら、うちの山垣部長が大門寺高校サッカー部のキャプテンと仲がいいこと知ってるだろ? その人からこっそり伝授してもらった方法なんだって。大門寺高校も験担ぎが功を奏し勝ち上がって来ているしさあ。オレたちもそれで行こうと思うんだ。で、決勝戦でヤツらと天下分け目の戦い! それが俺たちの夢なんだ」
だから頼むよ、と僕はとうとう土下座をした。額がずりっと畳に擦れヒリヒリする。後頭部もまだズキズキするし、鼻血も完全に止まったわけじゃない。
ほーっと深いため息をつくのが聞こえた。
部屋の空気が和らいだ気がする。
僕は土下座をキープしたまま、おそるおそる視線を上げる。
加奈子が緊張を緩め体育座りになる。尻が扇情的に丸く見えドキッとしてしまった。
「戦時中も、出征する兵士に弾除けとしてヌイて持たせたって言うからね。わたしも日本人だし……。協力しようかな……」
「そ、そう来なくちゃ! 加奈子は大和撫子じゃないか!」
「でも、私の名前だけは絶対に出さないでよ」
僕は彼女に拝むように両手を合わせた。
「絶対だよ。ゼッタイ、ゼッタイ守ってよ!」
さもないと、サッカー部のマネージャーを辞めると言う。そして僕とももう絶交だと。
「大丈夫だ、任せとけ! オマエの名誉にかけて約束は守る!」
断言して指切りげんまんした。
「よし、じゃ、早速……。パンツ脱いでくれ」
返事も待たず、僕は彼女のもこもこのショートパンツに手をかけた。
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