3.謝罪と治療

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3.謝罪と治療

 部長に疑われたことが悔しかった。そんなに僕のことが信じられないのか? そして惨めだった。試合に負けたのは僕たちに実力がなかったからで、ヘアのせいではない。 ――とは思うものの、大して実力があるとは思えない大門寺高校は着々と勝ち進んでいるのが不思議でならない。やはり処女のヘアの効き目だろうか。僕らのチームが負けたのは、毛が処女のではなかったことが原因なのだろうか。 「大門寺高校だって、が処女のヘアだかどうかわからないじゃない。勝ったのはけっこう実力だったりして」  僕の部屋は机の上も箪笥の上も埃がたまりつくしていた。ベッドの上に散らばった漫画本やらCDやらタオルやらを片付けながら加奈子は言った。 「加奈子さあ、大門寺のキャプテンってお前と同じ中学出身だろ?」  そうよ、と誇らしく胸を張った加奈子。春澤さんとは学年はいっこ違い。マンションも同じで、顔見知り。中学では会えば気軽に話しかけたし、今でも会えば情報を交換し合うのだと。 「うちの中学ね、サッカー強かったんだから。春澤さんってすごく指導熱心だったし、部員思いだった。うちのクラスでいじめられてる男子がいてね。二年生の春澤さんがわざわざ一年生の私たちの教室まで降りて来て、その子をスカウトしたのよ。その子、とても気が弱いんだけど、運動神経はよくてね……」  春澤さんと同じ高校に進学して、今では彼の右腕として活躍していると言う。 「人望があるのよ」  遠い目をして言った彼女のその一言がやけに僕の胸に突き刺さった。 「それに比べてうちの部長は…」  加奈子は大きくため息をついて続けた。 「そんなに処女のヘアがいいんなら、自分たちで処女を見つけてきたらいいじゃない。自分たちのカノジョだって処女じゃないくせに。ほかの女の子探すのができないもんだから、気のいいあなたに押しつけて……。その結果私は大事なところから毛を抜かれて……。もう、恥ずかしいったらありゃしない!」 「いや、オマエのヘアだってバレたわけじゃないから…」 「もうみんなわかってるわよ。伊藤先輩の目つき見たでしょ、あなたも。榊原君と佐藤君なんて、当てつけるように私の下半身ジロジロ見てた」 「だから、それは錯覚だって。言葉で言われたわけじゃないだろ?」  ううん、と加奈子は激しくかぶりを振った。 「私たちが条例を犯してつきあっていることも、からだの関係があることも、あなたが私のヘアを抜いてみんなに配ったことも、みんな知ってますよって言う目つきだった!」
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