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二章
ずらりと植わる桃の木が、春の息吹を振りまいている。
はちきれんばかりに花開くその香りに誘われるのは、人のみではあらず。ぶんぶん羽音を立て、蜜蜂たちがせわしなく飛んでいた。
始祖を奉る霊廟で、年に一度の祭りが始まった――。
敷地の隣りには、梅園と桃園が併設されている。邪気払いのためである。
植えられている木々は、春になるといっせいに花開き、参拝者の目を楽しませた。自然、屋台が立つようになり、春の祭りも盛大になった。
リヨンも友と参拝を済ますと、桃園へ向かった。
祭りの日に、桃園で出会った男女は結ばれるという言い伝えがあるからで、いつしか、良き伴侶との出会いを求める場となっていた。
今年も着飾った人々で桃園は、溢れかえっている。もちろん、リヨンはあの上着を纏っていた。
「ねえ、あの人たち」
友がリヨンの袖を引く。
「え?」
「さっきから、こちらを見ているわ」
くすりと含み笑い、浮き足立つ友にリヨンは少し呆れた。
確かに若者たちが、こちらを気にかけている。少し幼さが残る顔立ちから、リヨンたちとそう変わらない年頃に思えた。
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