二章

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何か動いた。そんな気がした。 リヨンは目を凝らす。 よくよく見ると、先の古木に、梅の花の色と同じ、白い上着を纏った男が立っていた。 どうすればよいのだろう。 「連れと、はぐれてしまった……ようで……」 リヨンの口が動いていた。 (いけない!見知らぬ男に、一人きりと知らせてしまった。少し軽はずみだった。もしも、男が素性のよからぬ者だったら……。) リヨンの中にいやな予感が走った。 「ああ。では動かない方がよろしいでしょう。ここでじっとしていれば会えますよ。実は、私も人を待っているのです……」 流れてきた男の声は実に柔らかで、さらに、男も連れとはぐれたようであった。 散れじれになってしまった場合、双方が動いては、迷い続けるだけ。片方がじっとしている方が断然出会いやすくなる。 こんな誰も来ないところで、たたずんでいるということは、言葉通りで、悪さしよう、ではないだろう。 「お似合いですね」 「え?」 「左衽の上着」 男の言葉にリヨンは息が詰まりそうになった。
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