二章

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行く先々で、上着を褒めてもらってはいたが、皆その鮮やかな色彩を讃えるだけで、誰も古風な形にまでは触れなかった。 つまりは、そこまで気がついていない、うわべだけの賞賛であったのだ。 男は上着を優しく眺め、上手に着こなしていると言う。 懐かしそうに目を細められ、リヨンはどうしたことか体が固くなった。 「リヨン!」 耳慣れた声が聞こえた。友の声である。 張られていた糸が切れたかのように、リヨンの体はふっと軽くなる。 「リヨン!」 声は、段々近付いてくる。 「ここよ!こっちよ!」 リヨンは、自分の居場所を知らせようと声をあげた。 友の姿を確認しようと、駆け出した。と、見知らぬ男の前であったことを思い出す。 声を荒げ駆け出した。女らしさの欠片もないと、恥ながら、再び古木を見ると、そこには誰もいなかった。 「探したわ!急にいなくなっちゃうんだもの。でも、紅い上着でわかったの」 朗らかな友の様子とは裏腹に、手持ちぶたさのような寂しさに、リヨンは襲われる。 むろん、男がどちらへ行ったかなど、友に聞けるわけもない。
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