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空気を変えるようにアェルドは小さく息を吐き出すと、改めてジョシュアに目を向ける。
ジョシュアの表情からは怒りや憎しみも感じられたが、何よりも悲しそうで辛そうだった。
そんな彼の手を取り優しく握る。
「前にも言ったが、怒りに身を任せてはいけない。お前にはやりたいことがある。そうだろう?」
「……うん」
「ならこれは知っておくだけでいい。いずれ知ることになるだろうから今言ったが……辛かったろう」
すまない、とアェルドが目を伏せる。
あんな凄惨なことを全て語った訳では無いが、自分の言葉や皆の雰囲気から読み取れる部分もあっただろう。
……やはり、早かっただろうか。
ジョシュアは袖で目元を拭うと、「ううん」と首を横に振る。
「オレ、何も知らないから。知ることも大事だと思うし……知りたい、とも思う」
かつての仲間たちが戦ってきた過去。それを無駄にはしたくない。二度と引き起こしたくない。
兄妹たちはそんな戦場で今も戦っているのかもしれない。そう思うと、やはり人間を恨みたくもなった。
ブルームから聞いた話では、兄妹たちは初めから望んで戦争を始めたわけではないらしい。ただ、そう教育され戦うことになったのだ。
そんな凄惨な現場ばかり、兄妹たちは見てきた。
……でも、だからこそ。助けたいなら。
過去を恨むんじゃなくて、未来のために頑張るしかないのだろう。
「みんなと、笑いたいから」
「……あぁ、そうだね」
アェルドは目を細めて微笑む。
では、と立ち上がるとブルームへと体を向けた。
「お前の話を聞くとしよう。現在もクストーデに在籍するという、男からの話を」
待ってましたと言わんばかりにブルームは頷く。
食器の片付けも終わったところだ。ジョシュアの正面にあたる席に座ると、「よし」と改めるように呟く。
そしてベリザリオを一瞥してから、ジョシュアを真っ直ぐに見つめた。
「彼から聞いた話だが──」
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