episodio.3「Vecchia storia(昔の話)」

3/7
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
 空気を変えるようにアェルドは小さく息を吐き出すと、改めてジョシュアに目を向ける。 ジョシュアの表情からは怒りや憎しみも感じられたが、何よりも悲しそうで辛そうだった。  そんな彼の手を取り優しく握る。 「前にも言ったが、怒りに身を任せてはいけない。お前にはやりたいことがある。そうだろう?」 「……うん」 「ならこれはだけでいい。いずれ知ることになるだろうから今言ったが……辛かったろう」 すまない、とアェルドが目を伏せる。 あんな凄惨なことを全て語った訳では無いが、自分の言葉や皆の雰囲気から読み取れる部分もあっただろう。 ……やはり、早かっただろうか。  ジョシュアは袖で目元を拭うと、「ううん」と首を横に振る。 「オレ、何も知らないから。知ることも大事だと思うし……知りたい、とも思う」 かつての仲間たちが戦ってきた過去。それを無駄にはしたくない。二度と引き起こしたくない。 兄妹たちはそんな戦場で今も戦っているのかもしれない。そう思うと、やはり人間を恨みたくもなった。 ブルームから聞いた話では、兄妹たちは初めから望んで戦争を始めたわけではないらしい。ただ、そう教育され戦うことになったのだ。 そんな凄惨な現場ばかり、兄妹たちは見てきた。 ……でも、だからこそ。助けたいなら。 過去を恨むんじゃなくて、未来のために頑張るしかないのだろう。 「みんなと、笑いたいから」 「……あぁ、そうだね」 アェルドは目を細めて微笑む。 では、と立ち上がるとブルームへと体を向けた。 「お前の話を聞くとしよう。現在もクストーデに在籍するという、男からの話を」  待ってましたと言わんばかりにブルームは頷く。 食器の片付けも終わったところだ。ジョシュアの正面にあたる席に座ると、「よし」と改めるように呟く。 そしてベリザリオを一瞥してから、ジョシュアを真っ直ぐに見つめた。 「彼から聞いた話だが──」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!