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「私ね、今の正直な気持ちを両親に打ち明けたの。好きな人が出来ました。その人の傍にいたい。その人と一緒にいたいって。そんな想い、お父さんとお母さんにもあったはずでしょ? 思い出して欲しいって」
舞は愛しそうに空を見つめる。
「だから私、美空市に帰りたいってお願いしたの。そしたら、伯父さまがお父さんに俺の会社に来いって。娘が幸せでいることが、お前たちの幸せだろうって……」
夜空を見上げる舞の瞳には両親、そして伯父や陽介さんへの感謝の気持ちが込められていた。
舞もひとつずつ、確実に大人への階段を登っている。
お互いに成長し、大切なものを育てて行きたいと空は思った。
二人は見つめあい、そっと唇を重ね合う。
二人のぎこちなかった恋は何時しか愛へと育まれていた。
「そうそう、ビッグニュースがあるの。三年後にね、美空緑地公園にプラネタリウムが建設されるんだって陽介ちゃんが教えてくれたわ」
「プラネタリウム? 美空公園に?」
「私、そのプラネタリウムの解説員になるって決めたの。たくさんの人に夜空を見上げてもらいたい。たくさんの人に星の美しさを知ってもらいたいから」
「舞は……自分の星屑を見つけたんだな」
空が穏やかに微笑み、舞の耳元で囁いた。
舞はこくりと頷き、夜空を見上げた。
「うん。星屑は私の心の中にあるの。空くんへの想いに両親への想い。夢とか希望とか、私が大切にしたい想い。そして、私を大切にしてくれる人たちの想い。それが星屑なんだって思う。キラキラ輝く大切なもの。私ね、これからも星屑をこの手のひらいっぱいに持ち続けたい。たくさんの思いやりを心の中に持ち続けていきたいの。空くんと一緒に」
舞は星空に向かって大きく両手を広げた。
「もう、秋に……茜色の季節になるのね。ペガスス座が見えるわ」
夜空いっぱいに浮かぶ星々に両手を広げた舞の手のひらには、星屑が溢れるように輝いていた。
了
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