苦くて甘い贈り物

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反対車線の向こう側、歩道に赤いマフラーをした久実さんがいた。 彼女の前には一人の男が立っていて、何か話をしているように見え た。男は、金髪にピアス、遠目からでも格闘技でもやっているのか 身体は大きい。あまりの体格さに今にも食べられてしまいそうな羊 と飛びかかりそうな狼を連想させられる。 男は少しにやけた顔でなにか言っているように見えた。 久実さんの表情はあまりよく見えない。 (久実さんの家族には見えない。 あのシャルロット校に通っていて、ヤンキーの友達がいるともあま り思えない。だとすると..もしかして...ナンパか?) 赤信号で止まっていたバスが動きだし、二人の姿が見えなくなって いった。 「まもなく~黒沢団地前~、黒沢団地前~。」 アナウンスが流れると同時に僕は停車ボタンを押した。 勘違いならそれでいい。 むしろ勘違いであってほしいとも思った。 久実さんの昔からの友達で、少しヤンキーっぽいけど 優しくて今日はたまたま帰り道に会ったから話していた その可能性はどのくらいだろうか。 様々な考えを巡らせながら、急いでバスを降り、バスと反対方向に 全速力で走る。
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