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きっかけは落とし物
オモテ
七時十一分発 桜川高等学校行
高校に入学してから、僕は、このバスに乗って毎日通学している。
しかしこの十一月に入ってから、一つ変わったことがある。
それは、僕が毎日座っているこのバスの一番後ろの席の一つ前の
窓際の席に女子高生が座っていることだ。
(今日も座っているな...)
ICカードをかざしてピッと鳴らしながら、そう思っていた。
バスの最後列まで歩き、彼女の後ろの席に腰を下ろした。
彼女からは、今日もシャンプーのような香水のような
ほのかに甘い香りがしていた。
やましい気持ちはない、全くもってない。
僕は彼女よりも前からずっと、この席に座ってきたのだから
誰にも何も言われる筋合いはない。
僕は独りで何かから自己防衛していた。
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