きっかけは落とし物

1/10
前へ
/21ページ
次へ

きっかけは落とし物

             オモテ 七時十一分発 桜川高等学校行   高校に入学してから、僕は、このバスに乗って毎日通学している。 しかしこの十一月に入ってから、一つ変わったことがある。 それは、僕が毎日座っているこのバスの一番後ろの席の一つ前の 窓際の席に女子高生が座っていることだ。 (今日も座っているな...) ICカードをかざしてピッと鳴らしながら、そう思っていた。 バスの最後列まで歩き、彼女の後ろの席に腰を下ろした。 彼女からは、今日もシャンプーのような香水のような ほのかに甘い香りがしていた。 やましい気持ちはない、全くもってない。 僕は彼女よりも前からずっと、この席に座ってきたのだから 誰にも何も言われる筋合いはない。 僕は独りで何かから自己防衛していた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加