苦くて甘い贈り物

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          『名探偵バリスタ』 少年誌にて連載が開始してから20年も続くロングセラーである。   祖父がマスターである喫茶店で働く主人公。 ある日交通事故に巻き込まれてしまい、気がついたとき なぜか彼は十九世紀のロンドンに飛ばされている。 頭の回転が早く、謎解きが得意な彼は、スコットランドヤードの 刑事顔負けの推理を披露することによって、警視庁にスカウトされ る。そこから数々の事件を解決していくという物語である...。 なんでも僕らの親世代の間でも人気だったという。 今では、100巻目前となり、更に注目が高まっている。 「そんなところに置いておくなよー。まあありがとう。」 僕は漫画を受け取り、鞄にしまった。 「おう。ジュースでも飲んでいくか?」 「いや、大丈夫。続き気になってたし、すぐ帰って読むよ。」 そう言って、部屋を後にした。 祐介は玄関まで僕を見送ると言って、あとをついてきた。 「え?え?なにそれ。」 彼は僕の後を着いてきながら、バットを持っていた。 「このあと、庭で自主練すっからよ。」 「あ、そういうことね。殺されるのかと思ったわ。」 僕はほっと胸を撫で下ろした。 「んなわけねぇだろ。じゃまた学校でな。」 口角を上げ、にやりと笑いながら彼は言った。 僕は手を振り、祐介の家をあとにした。
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