2 『銀英伝』がくれた文明論

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2 『銀英伝』がくれた文明論

 私は『銀河英雄伝説』などの名作に刺激を受けて、素人SF『Lucifer(ルシファー)』シリーズを書くうちに、次のような文明理論(仮説)を考えることができました。  文明とは、高度な技術を伴う社会活動の様式であり、それには六つの要素があると思います。  まず、①科学・技術、②経済・社会活動、③制度・政策。これらは、個人の活動でいえば、知る(認識)、する(行動)、決める(決定)に対応しています。  文明活動の本体は、全ての人々が営む経済・社会活動(ここでは文化活動や行政活動も含む)ですが、科学・技術はそれを豊かにするため、制度・政策はそれを健全に保つために、分業化した活動といえましょう。  歴史的にみると文明は、技術が進めば社会が変わり、社会が変われば政策が変わり、その政策がさらなる技術開発を促すという順序で、発展してきました。科学・技術が進歩すると経済・社会活動が豊かになりますが、同時に複雑・加速化するので、利害の衝突が増えます。それを防ぐために利害調整政策が生まれますが、他方でその限界を克服するため、次世代技術の導入政策も求められるのです。  しかし、科学・技術は④物的資源に具現化されないと、社会を豊かにできませんし、制度・政策は⑤人的資源を通じて実現されないと、社会を健全に保てません。制度・政策が次の科学・技術を開発するにあたっては、⑥自然・社会環境への考慮が必要です。これらを簡単にいえば、モノ、ヒト、環境となりましょう。  ⑥について説明しますと、現代では巨大科学(ビッグ・サイエンス)と言われるように、科学・技術の研究・開発には多くの物資、人材、資金や波及効果への配慮が必要なので、政策による支援が不可欠です。またその際には、資源産出や技術移転の可否、社会の需要や価値観などの、自然・社会環境が制約または促進条件として働くのです。 d866cf7e-3bfb-4871-8a61-1529364f0dff  以上①~⑥の要素は、〝ダビデの星〟や〝籠目紋(かごめもん)〟とも呼ばれる、六芒星(ろくぼうせい)(✡)の形で図示でき、私はこれを『文明の星(The Star of Civilization)』、これによる文明論を〝文明の星〟理論(仮説)と呼んでいます。
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