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4 社会工学
この作品では、帝国や同盟の社会制度や教育番組もリアルに描かれています。それを見ると、皆が協力して社会を運営するための、組織技術や教育技術といった、人々を対象とする社会工学的な技術も必要なものだと分かります。
例えば法律も、その内容は『皆でああすべき、こうすべき』という政策(社会的意思決定)ですが、その形式をみると、『ああいうときはああすべきである、という形で政策を決めておけば、効率性や公正さが高まる』という、社会工学的な技術であるといえます。
それは、人々の協力の生産性を高める技術であり、政策の実現を助ける技術です。技術も政策も、広い意味では社会活動といえるので、両者がお互いを社会活動の一部とみて助け合うことができます。そこで、技術の開発・利用の健全性を高める技術的政策があるように、政策の立案・実施の生産性を高める社会工学的技術があるのだと思います。
技術が社会を豊かにし、政策が社会を健全に保つ経路には、それぞれ4つあると考えられます。
① 社会に直接的な影響を及ぼす、直接経路
……農業・工業・情報技術などの画期技術
産業政策・社会保障などの経済・社会政策
② 社会に働きかける必要条件を整備する、間接経路
……冶金・電気・演算指示工学などの実現技術
教育・保健政策などの人的資源政策
③ 自らの生産性・健全性を高める、自助経路
……研究・開発技術
行政管理政策
④ 技術と政策が助け合う、互助経路
……政策の生産性を高め、その立案・実現を助ける社会工学的技術
(組織・会計技術、公教育・公衆衛生技術、企画支援技術)
技術の健全性を保ち、その開発・普及を助ける技術的政策
(研究・開発政策、社会基盤政策、社会工学的政策)
社会工学的技術は、④の互助経路にあたる技術というわけです。またこの経路は、相方である政策または技術のどの経路を助けるかにより、さらに細かく3つずつに分類できます。
もちろん、技術は諸刃の剣です。ルドルフが行ったような恐怖政治や虚偽宣伝で人々が動かされるのは、恐ろしいことです。現実にナチス・ドイツも、法律を作って差別や迫害を行いました。特に、人々の意見を大事にし、皆が話し合って物事を決める民主主義なら、よほどの事情がない限り、人の命を左右したり、公の利害に関わる事実を隠したりという強い〝技術〟が安易に使われてはならないはずです。
しかし本来、社会工学的な技術とは、他人を都合よく動かす技術ではなく、人々の協力を助ける技術であり、三権分立や監査組織のように、権限の濫用を防ぐ技術も含んでいます。組織技術・会計技術や教育技術、企画支援技術のような社会工学技術は、新帝国にも同盟にも当然あり、それらを適切な人々が、適切な形で用いる限り、社会の役にも立っていたことでしょう。
ただし、便利な技術に頼るばかりで、それを使い、使われる人々の資質が衰えてしまったのでは、技術が悪用・誤用されたり、副作用が増えたりします。そもそも社会を健全に保つ、制度・政策自体の正しさもおぼつかなくなってしまうかもしれません。
そこで、自分で自分を律するように、より多くの人々が、より様々な政策に参画して、自らを向上させながら、技術導入、経済・社会活動あるいは政策自体といった文明活動を制御して、社会を豊かにし、健全に保つことで、発展させ続けることが大切なのではないかと思いました。
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