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『おめでとうございます。
抽選の結果、貴方は1週間誰の言うことも聞かせられる『女王様』となりました。』
そう寝起きの私のスマホに届いていたメールは、何か新しい詐欺のものかと思った。
しかし、そのメールには続きがある。
『貴方は、この1週間誰の言うことも聞かせられます。
親も、教師も、自分をいじめてくる人すらも。
『女王様』に命じられた人は、その命令を絶対に聞きます。
期限は来週のメールを開いた時間までです。
1週間、女王様ライフをお楽しみください』
メールはそう締めくくられていた。
『自分をいじめてくる人すら』その言葉に、どうしようもなく惹かれる。
……取り敢えず、朝ごはんを食べよう。
考えるのは、それからだ。
私は制服に着替え、リビングに向かう。
「おはよう、お母さん」
「おはようございます、牡丹さま」
牡丹、さま?
「は……?」
思わず声が漏れる。
「お母さん、もしかして私のスマホのメール見た?」
「?何の事でしょうか。
私は牡丹さまのスマホは見ておりませんよ。」
もしかしたら、お母さんが私がメールを見るよりも前に見て、それでどっきりか何かを思い付いたのでは無いかと思ったが、そうでは無いみたいだ。
夢なのではと思い、頬をつねってみる。
「……いたい。」
しかし、ちゃんと痛みは感じる。どうやら夢ではなく、ちゃんと現実のようだ。
「まあ、いいや。
お母さん、今日の朝ごはん何?」
「本日のモーニングは、トーストとミルク、それにスクランブルエッグでございます。」
そう仰々しく言うお母さん。
いつもと同じ朝ごはんらしい。
「……いただきます。」
「どうぞお召し上がりくださいませ。」
そう言うと、お母さんはキッチンへと下がっていく。
朝ごはんを食べ終えると、デザートのプリンが出てくる。
しかし、それは昨日お母さんが自分で食べると言っていたものだ。
「…え、お母さん……。」
「本日のデザートでございます」
「でも、それってお母さんのじゃ……」
「しかし、昨晩、牡丹さまがこのプリンを食べたいと申しておりましたので。
従者が主人の求めるものを捧げるのは当たり前の事でございます。」
「そ、そうなの……?」
「そうであります。
…ささ、早くお食べにならねば学校に遅刻してしまいます。」
そう言われて時計を見ると、いつもは家を出ている時間だ。
「わ、やばい。
ねえお母さん。」
「何でありましょう」
「このプリン、夜に食べるから冷蔵庫に仕舞っておいて。」
「かしこりました。」
そう答えると、お母さんはプリンを持ってキッチンに向かう。
準備をし、家を出ようとすると、いつもはリビングから声をかけてくるお母さんが、玄関まで見送りに来ている。
「いってらっしゃいませ、牡丹さま」
「うん、行ってきます」
私は拭いきれない不信感を抱えたまま、家を出る。
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