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堰を切ったかのように、ケイの瞳から、ふたたび涙がこぼれ落ちた。
悔しさの涙は、理由なく流れる続ける。
どうして、こんなことになったのだろうと――。
どうして、一人で耐えなければならないのだろうと――。
……なぜ、麒麟などに、哀れみを受けなくてはいけないのだろう。どうして、麒麟などを……。
洞窟の岩肌が、ケイの嗚咽を響かせた。
少女の強がりを癒すかのように、暖かなものが、その涙をぬぐった。
ジンの白い指が、ケイの頬を伝っている。
「夜があけたら、天界へ戻らなければならない。麒麟は、聖人なくして下界で生きることはできないのだ。それでもいいか?」
頬を伝う指が、ゆっくりとケイの胸元へ這ってくる。
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