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下着姿に等しいそれは、体の線がしっかりと出てしまう。 まるきり裸というわけではないが、ケイは、肌を露出しているようで、落ちつかなかった。 でも、衣を差し出せば、裸の男を見なくて済む。苦渋の選択と言えるだろう。 「すまん。世話になった」 男には、衣が少し小さいようで、手足がにょきりと伸びていた。 衣を(まと)った男を見て、さっきまでは獣だったと、誰が思うだろう。 ケイに向かって、礼を言う瞳からは、深く清らかな(あお)い光が放たれている。 この世のものとは思えない美しい双眸(そうがん)は、月影のように冴え、それでいて、春の日差しのように暖かい。 人のそれとは大きく違っている。 (やはり……麒麟なのだろうか……。) と、思えども、男と二人きり。ケイの体はこわ張ったままで、さて、少しばかり、あどけなさの残った面差しには、戸惑いしか表すことができなかった。
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