1/7
前へ
/26ページ
次へ

男は足を引きずり、ケイと共に洞窟へ来ている――。 矢に射られ、落ちる瞬間、ここが見えたと言い、男はケイにそこまで、肩を貸してくれと伏し目がちに頼んできた。 「すまん。本当に面倒をかけた。人の形になれば、自分で矢が抜けると思ったのだが、案外深かった」 岩肌に、男の声が響き渡った。 とたんに男は驚き、あたりを見回した。 ぞんざいな言葉使いとは裏腹の、きょとんとした顔つきがケイに笑みを呼ぶ。 同時に、さっきとまるで違う柔らかな物腰に、どう応じればよいのか、困り果てた。 気まずい空気が流れていく。 「あっ、あの……傷に効く薬草……摘んできます」  言って、ケイは、洞窟から飛びだした。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加