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二
男は足を引きずり、ケイと共に洞窟へ来ている――。
矢に射られ、落ちる瞬間、ここが見えたと言い、男はケイにそこまで、肩を貸してくれと伏し目がちに頼んできた。
「すまん。本当に面倒をかけた。人の形になれば、自分で矢が抜けると思ったのだが、案外深かった」
岩肌に、男の声が響き渡った。
とたんに男は驚き、あたりを見回した。
ぞんざいな言葉使いとは裏腹の、きょとんとした顔つきがケイに笑みを呼ぶ。
同時に、さっきとまるで違う柔らかな物腰に、どう応じればよいのか、困り果てた。
気まずい空気が流れていく。
「あっ、あの……傷に効く薬草……摘んできます」
言って、ケイは、洞窟から飛びだした。
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