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……そして。
男は戻ってきた娘の足に、いくつもの擦り傷を見た。
息せき切って帰ってきたと思ったら、娘は良く冷えた水を差し出して、それを飲んでいる間、深緑色の草を傷口に添えると、なにやら、ぶつぶつ言っている。
側で世話をやく娘の姿が気になって仕方がなかった。
(そうだ、名を聞いてなかった。)
「娘、名は何という?」
「……ケイです」
「私は、ジンだ」
矢継ぎ早に言葉を発する男に、ケイは、少し気後れしたが、どうしても気になる事――、男の正体について尋ねてみた。
「あ、あの、あの、あなた様は、麒麟なのですか?」
その問いに、ジンは小さく頷いた。
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