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流れる空気は冷たく頬を刺し、差し込んでいた日差しも、いつの間にかとぎれ、洞窟は薄暗くなっていた。 「随分と引き留めてしまった。日が暮れてしまったようだが、これでは、家に帰れないだろう。いいのか?」 若い娘が、日暮れ時、こんなところにいるものではない。家人もさぞかし心配していることだろう。 それくらいは、ジンにもわかる。 「私は……一人ですから」 ケイの慎ましやかな返事に、ジンは引きつけられた。 「親はいないのか?」 「母親は私の幼い時に、父親も、昨年流行病で亡くなりました」 「お前は……天涯孤独……なのか?」
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