20人が本棚に入れています
本棚に追加
三
ただただ、ケイの身の上に心をかき乱されるばかりで、頬を染める娘がいるということに、ジンは気がついていない――。
慈悲。
それが麒麟の性。天涯孤独、一人で生きている、ケイの生い立ちが、不憫でならなかった。
やおら何かを確かめるように、ジンはケイの傷つく足を撫でた。
ビクリとケイの体が反応する。
痛みがあるのかとジンは驚き、注意深く、再び傷を撫でてみる。
ケイの心中は穏やかではない。
たおやかな細い指が、幾度も自分の足を這う。
これのどこが落ち着いていられよう。
しかも、不思議なことに、傷はたちまち癒えていくのだ。
最初のコメントを投稿しよう!