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ひどく霧のかかる中、ケイはいつものように、薬草摘みへ向かっている。 背負篭(せおいかご)を担ぎ、父親のお古の直衣(ころも)をたくしあげ上げ、細く続く山道を登っていく。 山に入る時は、決まって男物の衣を身に(まと)った。 女物と違って、(すそ)がまとわりつくこともなく足さばきが良いからだ。 当然、作業がはかどる。とはいえ、ケイも年頃の娘。渋い色合いの古着に身を包むのに、恥じらいがない訳ではない。 しかし、これも今日を生きるため。 幸い、山の中では人と出会うことがない。それがせめてもの救いと言えた。
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