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(……男を知らないから、この子はこうして慕ってくる。幻想に惑わされているだけなのに。いや……日々の暮らしに負けてしまったのだ……。)
両親に逝かれ、生きるためと自分の感情を押し殺してきたのだろう。
流す涙は、今までの寂しさや辛さ。
その涙に、ジンの中では、麒麟の性が熱くうずいてしようがない。
思いに導かれるまま、おそるおそるケイの頭を撫でてみる。
市井の娘のように、小粋に髷を結っているわけでもない。
かんざし一本さすわけでもなく、ただ無造作にひとつに束ねている髪は、艶やかどころか日に焼け、ごわごわしていた。
だが、それこそ野に出て作業している証。
一人、今を必死に生きている証拠。
どんなに柔らかな髪よりも、清らかで美しい髪と言えた。
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