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身をくゆらせ、ケイはジンから逃げた。 ただの同情に、身をゆだねることなどできるわけがない。 必死の形相で、ケイは拒む。それでも、ジンの指は執拗に追ってくる。 「私が導かれた香りは、お前だったんだよ。私は、お前と出会うために導かれた。正道はここにあったんだ」 「あの……?」 正道と言われても、何のことかケイにはわからない。 仰々しい響きに、ジンの顔を伺ったとたんに、ケイはしっかり抱き締められた。 「お前は子を宿す。聖人を産むんだ」 「……子?」 被さるジンの瞳は、夜空の星のように輝いていた――。
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