20人が本棚に入れています
本棚に追加
身をくゆらせ、ケイはジンから逃げた。
ただの同情に、身をゆだねることなどできるわけがない。
必死の形相で、ケイは拒む。それでも、ジンの指は執拗に追ってくる。
「私が導かれた香りは、お前だったんだよ。私は、お前と出会うために導かれた。正道はここにあったんだ」
「あの……?」
正道と言われても、何のことかケイにはわからない。
仰々しい響きに、ジンの顔を伺ったとたんに、ケイはしっかり抱き締められた。
「お前は子を宿す。聖人を産むんだ」
「……子?」
被さるジンの瞳は、夜空の星のように輝いていた――。
最初のコメントを投稿しよう!