18人が本棚に入れています
本棚に追加
手には、男の血のにじんだ矢……。
ケイの足は震えた。
自分の手の内に毒矢がある。
とたんに恐ろしくなり、谷へ矢を投げ捨てた。
それでも、がくがくと膝は震え続けて、ケイは立っていることさえおぼつかない。
男は、何事もなかったように息を整えていたが、矢を抜いたあとからは、じわりじわりと血がにじみ出て、足が赤く染まり始めていた。
(いけない!止血しないと!)
ケイは、慌てて懐から手ぬぐいをとりだすと、傷口をしっかりと縛った。
ぎゅっと結んだとたん、男は体を揺らして小さな呻きをあげた。
最初のコメントを投稿しよう!