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「康平、お前ほんと良かったわ!すげぇ動きやすかった!」
「ほんと?雄大もいて欲しい位置に動いてくれるからやり易かったよ」
「俺ら良い相棒だな〜」
やっと体育の授業も終わり、俺は身体よりも精神が削られていた。
そんなところに諏訪と南の暑苦しい会話が聞こえてきて、尚更げんなりとする。
今となっては後からやってきた南の方が諏訪のグループに馴染んでいる気すらして、こんなにも頑張って手に入れた俺の立ち位置も、南はこの短期間でいとも簡単にその座を奪っていくのかと悲しい気持ちになった。
しかも本人が意識せずに自然とそうなっていく様が、より一層俺の心を逆撫でる。
───なんかムカつく。
自分勝手な感情が心の中に渦めくが、そんな思いを吐き出してぶつけるほど俺も馬鹿ではない。
行き場のない不安と焦りを感じながらも、俺はいつものように顔に笑顔を貼り付けて取り繕った。
•••••••••
「体育終わったし俺今日はもうやる気失せた」
「何言ってんの諏訪、テスト前なんだから身入れて授業聞きなよ」
「旭だって赤点ギリギリだったろ?今回こそ俺と一緒に補習組になろうぜ」
「馬鹿言うなって」
体操着から制服に着替えて自席で次の授業の準備をしていれば、コーヒー牛乳のパック片手に諏訪はそんな事を言ってくる。
諏訪は昔から勉強だけはできなくて、俺を何とか沼に引き摺り込もうと必死なようだ。
俺もそこまで勉強は得意ではないが今のところ赤点は取った事がない。
諏訪は「赤点ギリギリ」と揶揄してくるが、そもそもいつも平均点は優に超えているし妙な嘘をつかないで欲しいなと呆れたように視線を向けた。
「とりあえず諏訪もちゃんと勉強しなって」
「旭教えてくれる?」
「俺にそんなこと求めないでよ、自分のことで精一杯だし。てか俺といたら諏訪は絶対勉強しないじゃん」
「あーたしかに、それは言えてる」
俺の言葉に諏訪は無邪気に笑って、いつもの空気感に俺はなんとなく心が落ち着くのを感じた。
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