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「もう知ってる人もいるとは思うが、今日うちのクラスに転校生を迎える。わからないことも多いだろうから、みんな色々教えてあげてくれ」
いつものようにHRを終えた後、担任の最後の言葉に教室内は待ってましたと言わんばかりに湧き立つ。
何をそんなに楽しみにすることがあるんだろうか。
俺はその様子を横目に見つつ、転校生が控えているであろう教室の入り口付近をじっと見つめた。
「じゃあ南君、入ってきて」
「...はい、」
担任の声掛けに遠慮がちに返事がされ、ゆっくりと声の主が教室に入ってくる。
そこにいたのはごく平凡な男子生徒で、女子を期待していたであろう諏訪に視線を合わせれば残念そうに笑われた。
「えっと...南康平です。仲良くしてもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします」
テンプレートのような挨拶に人当たりのいい笑顔を浮かべて、南はぺこりと頭を下げた。
人の良さが既に溢れ出ているが、とても大人しそうな生徒で、この感じからすると俺達のグループとはそこまで関わることはないだろう。
その時までは、そう思っていた。
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