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しかしそんな思いも、授業明けすぐの休み時間に覆されることになる。
みんな初めての転校生にどう察したらいいか分からず遠巻きに眺めていた中、何かと世話焼きな諏訪が南に話しかけに行ったのだ。
「南くん、よろしく!俺諏訪っていうんだけど」
「え、ああうん、よろしく。えっと...」
「周り知らない奴らばっかで心細いよな。わかんない事とかあればすぐ声掛けてくれよ、力んなるし。....なあ旭、こっち来いよ」
南と話している諏訪をぼんやりと自席から眺めていれば諏訪からそんな風に声を掛けられ、俺はまじかと思いながら席を立つ。
諏訪の近くまで行けば南は不安そうな表情を浮かべてこちらを見上げてくるので、俺はにこりと笑って挨拶をした。
「...俺、里見 旭。よろしくね南くん」
「こいつの名前微妙に韻踏んでんの、面白くね?」
「ちょ、諏訪...」
「あはは、たしかに。里見くん、よろしく」
「...うん」
最初は緊張していた南も諏訪のいつものフレンドリーさで少し雰囲気が和らいで、俺たちはなんとなく穏やかな初対面を果たした。
諏訪のことだから一人ぼっちでいる奴のことはほっとけない。
こうなるときっとこの先も何かと南と行動をともにすることが多くなるかもしれない。
俺はぼんやりとした不安を抱えたまま、未だに楽しそうに話している諏訪と南を眺めた。
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