766人が本棚に入れています
本棚に追加
/323ページ
「え、じゃあアリア近いのか。俺もあそこよく行くぜ」
「ほんと?俺最近引っ越してきたばっかりだから、この辺だとまだそこしか行ったことないんだよね」
アリアとは諏訪の家の近くにある大型のショッピングモールだ。
会話の内容からするに、諏訪と南は家も近いらしい。
「あの辺のことなら俺に任せて!もし良ければ今週末とか案内してやるよ。てかそうなると南くんの歓迎会もやりたいわ。南くんカラオケとか行く人?」
なんだか知らぬ間に会話が進んでいる。
諏訪は人懐っこい笑みでそんなことを尋ねて、南もそれに笑顔で答える。
そんな様子を見ながら、俺は小声で諏訪に声を掛けた。
「諏訪、今週はヒロの誕プレ買いに行くって話だったろ」
「え、ああそっか。...まあいいじゃん、景広の誕生日来週だし、俺もそれまでに買っとくから」
「...一緒に行くって話だったじゃん」
「ガキじゃないんだから一人で行けるだろ」
景広とは、諏訪と同じく小学生時代からの友人で、高校こそ分かれてしまったが、今でもよく学校帰りに会ったりして普通に仲良くしている。
俺は結構前から計画していたヒロの誕生日プレゼントを買いに行くという予定をなしにされ、内心不服に思った。
しかしそんな思いを表に出すようなことはせず、仕方ないなと困ったように笑みを浮かべて、寂しいと思う気持ちにはそっと蓋をした。
最初のコメントを投稿しよう!