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数日が過ぎ、静が以前から申し出ていたレッスンの見学が行われることとなった。
大歓迎の葉月は自身のCDにサインを貰うだけではなく、店のポスターやポップにまでサインを貰うことに抜かりはない。図々しいお願いでも静は快く引き受け、和気あいあいとした雰囲気で店内がひときわ明るくなった。
「まさかうちの店に桐谷静さんが来るなんて!」
「ねー!店長、どんなツテ使ったんですか?」
「私じゃなくて山名さんの知り合いなのよ」
「えー!山名さん?すごーい!」
「えっと、私が一曲弾く約束で来てもらったので……弾きますね」
「えっ!桐谷静に認められてるの?山名さん、すごっ!」
「あ、あはは……」
盛り上がる同僚たちに持て囃されながら、春花はいつものレッスン室とは違う、発表会用のピアノの前に座った。個室になるレッスン室とは違い少しだけ観客が入るような広さの部屋には、静、そして同僚たちがわらわらと集まる。開け放たれた扉の隣は店舗と直結しており、来店する客も自由に行き来することができる。
「みんなは静のピアノを聴きに来ているのに、まるで私のピアノ発表会みたい」
「そうだよ。俺は春花のピアノを聴きに来たんだから」
「本当に弾くの?私の演奏なら家でも聴けるのに」
「家と外では違うだろ?」
「そうだけど……」
まるでコンサートさながら、ピアノにスポットライトが当たり室内の照明がわずかに落とされた。
「さあ、春花」
静が背中を押し、春花は緊張しながらピアノの前に立った。ペコリと一礼すると、わあっと歓声が上がる。
椅子に座るとザワザワとした店内がしんと静まり返り、春花の身がきゅっと引き締まった。
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