華の日常

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「そんじゃ今日はこの辺で終わるかー… また明日もおいで」 スマホの画面から響く低周波な音の波が私の鼓膜を小刻みに振動させる。 秋(しゅう)の配信が終わってしまった。 最初から最後までのI時間、ずっと視聴していた右京 華(うきょう はな)はなんとも言えない虚無感のようなものに襲われていた。 「ふぅー。疲れたなぁ」 胸に溜まっていた息を吐き出すといつも現実に引き戻された感覚に陥る。 体感では5分ほどだったが、体はやはり正直らしい。 伸びをすると具体的な場所は分からないが上半身の骨が何本か鳴った。 「明日は何時から配信だろう…」 華はタスクを落としていた「声惚れ」をもう一度開き、秋のプロフィール欄にある お知らせ掲示板を見にいった。 "21時から始めます" 秋は次の日の配信予定時刻をここに書いてくれているのだ。 まあ、何時からだろうと暇を持て余す大学3年生の華には問題なかった。 「え?てか明日グループ配信じゃん!」 「声惚れ」にはグループという機能が存在し、 3人から5人で集まり、リーダーと副リーダーを 決めればグループに認定される。 華がリアコしている秋の所属するグループは 「ファントム」という4人グループだった。 メンバーは リーダーの夜(よる)、副リーダーのかおり、 最年少19歳の詩織(しおり)、そして秋の男女 2人ずつのグループだ。
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