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「いや…」
先生は煙を吐きながら、
「希世さんには正月の買い物に行ってもらわんといかんのでな」
と仰られました。
白井さんの肩は見る見る内に下がって行きます。
「とにかく、希世さんは買い物、要君は部屋の掃除、白井君は原稿用紙の整理だ」
先生は煙草を消しながら仰いました。
「先生には原稿を書いて戴かなければいけないので…、仕方ありませんね」
白井さんは珈琲カップを手に取られました。
「いや、私は、町内会の方に顔を出してくる」
白井さんは顔を上げられ、
「え、ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい」
と立ち上がられました。
「原稿は間に合いますか」
先生は珈琲に砂糖とミルクを入れながら、
「白井君。年の瀬の野暮な事を言うもんじゃないよ」
先生はニコッと微笑まれ、
「正月くらいゆっくり過ごそうじゃないか」
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