年越師匠

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先生も白井さんも私の方を見ておられます。 白井さんは鼻の穴を広げて興奮冷めやらぬ様子です。 そして希世さんだけが珈琲を飲みながらクスクスと笑っておられました。 先生は珈琲を飲み干して、立ち上がられました。 「まあ、とにかく私は町内会へと行って来る。餅を搗いてる筈なんでな」 と言い、食堂を出て行かれました。 「私も原稿の整理をします。要君、原稿の方は頼みましたよ」 強い口調で白井さんは仰られ、書斎へと向かわれました。 食堂に残った私はゆっくりと椅子に座り直しました。 それを見て希世さんはまたクスクスと笑っておられます。 困りました。 先生の代わりに原稿を書くなど出来る筈もなく、私は珈琲に砂糖を入れて混ぜながら途方に暮れてしまいました。
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