9人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、私の胸騒ぎはその形を変えた状態でやって参りました。
「要君、要君」
部屋の掃除を終えた私を呼ぶ声が玄関の方から聞こえました。
慌てて玄関へ行くと、町内会長の源田さんが、先生を連れて立っておられました。
先生の右手には包帯が巻いてあり、怪我をされたのは直ぐにわかりました。
「先生、どうされたのですか」
私は先生に肩を貸して、家の中にお連れしました。
「いや、恥ずかしい。餅を搗いていたんだけどね、張り切り過ぎて手首を捻ってしまったらしい」
先生は笑いながら履物を脱いで、家に入って行かれました。
町内会長の源田さんはバツの悪そうな表情で頭を下げられます。
「医者には連れて行ったんだけど、しばらくは右手を使わない様にって事だったんで」
そう仰ると、外に待たせていた人から餅の入った袋を受け取り、私に渡されました。
最初のコメントを投稿しよう!